改札をくぐって、二人の顔を見たとき、彼女はそれ以上立っていることができなかった。膝から崩れ落ちて、石畳に手をついたら、底冷えがした。
おおう、おお、おおおおおおう!
周りの目をはばからずに彼女は吼えた。
軽くどよめきが走ったが、むくんだ顔の女の方が彼女の頭を抱いて、黙らせた。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ……ね、もうだいじょうぶ」
まばたきの音が聞こえそうなまつ毛の奥の目はねむたそうだが、しかし乾いていた。
「ああ、ああ、ああ……!」
女の胸と腕に包まれてもなお彼女はくぐもった叫びを喉の奥で続けていた。
それを痩せた男が日をふさぐように立ち、眺めた。
「なあ、そうだよ、おまえはね、何にも悪くないんだ、何にも」
男の声は所在無く中央沿線沿いの駅前をたゆたい、ロータリーを一周して、やっと彼女の耳に入った。
体が痙攣するのは、押し込めて、奪われた語りのせいだ。とめどなくどこからから震えは来て、とまらなくなる、振動は増幅していく。
キャーキャーキャーキャーキャー
そうなのわたしは全然悪くない、悪いのは妹とあなたよ、悪魔が来てしまうんだわ、二人のせいで。
しかし実際に唇からこぼれることのないその言葉が頭の先からつま先までをひどい速さで駆け巡っていく。
男がしゃがんで、それから彼女を抱き上げ、口をふさいだ。
「なにがいいたいんだい、こえだちゃん」
コエダチャン、懐柔するような声でそう呼ばれ、彼女は、自分を抱き上げる男が彼女をそう呼ぶことを思い出した。コエダチャンとスバルチャン、それがわたしたちの彼の前での名前だった。